マルミアリタケ Ophiocordyceps formicarm

2022/5/22,茨城県

マルミアリタケ Ophiocordyceps formicarm

 子実体はミミカキ型またはタンポ型で、長さ10 ㎜から60 ㎜、1から複数本、宿主の胸部や腹部から直生する。柄は太さ数㎜、やや繊維質で黄白色から淡黄色。結実部と柄の境は明瞭で、鮮黄色から橙黄色。子嚢殻は斜埋生、孔口は微突出する。
 土中または朽木中のアリのワーカー、女王問わず発生するが、特に朽木中のムネアカオオアリの女王から発生した個体が見つかることが多い。

 本州においては、5・6月ごろをピークに、春から夏季にかけて発生する。

 近縁種にアリタケ Ophiocordyceps japonensis があり、本種よりも子嚢が短いことで識別されるというが、成長不振の本種と思われる個体から似たような子嚢が確認されたという例もあり、本種とアリタケは同種である可能性もある。

2022/5/6,追培養下。

参考文献-(1),(2),(3),(4)

ウメムラセミタケ Tolypocladium paradoxum

2022/1/29,大阪府 ウスイロウメムラセミタケ。

ウメムラセミタケ Tolypocladium paradoxum

 子実体はハナヤスリ型、地上部の長さ20-60㎜、1から数本直生する。柄は円柱型でややもろい肉質、未熟時は灰白色、後にオリーブ色から黒緑色になる。結実部は柄と同色。子嚢殻は結実部の肉の色よりやや濃色で埋生、孔口は突出する。地中部は菌糸状・細根状、または直根状、白色。
 地中の各種セミの幼虫から発生し、宿主は白色の菌糸で覆われる。

 春と秋に発生するとされるが、近畿地方では晩冬から発生がみられる。各種林内地上に発生する。トップの写真の個体はタンポタケ(春型)に混生していた。

 色彩変異が多く、清水図鑑には通常よりも淡色のウスイロウメムラセミタケ、紫色をしたムラサキウメムラセミタケ、白色をしたシロウメムラセミタケ、樺色をしたカバイロウメムラセミタケが記載されている。
 近縁種にイネゴセミタケ Tolypocladium inegoensis があるが、イネゴセミタケは子嚢殻が半裸生型である点、柄と結実部の境界があいまいである点、長野以北の北日本でのみ確認されている点などからウメムラセミタケと区別できる。
 本種はセミ生の冬虫夏草であるが、タンポタケハナヤスリタケといった菌生冬虫夏草と同じTolypocladium属に属し、分子系統学的な解析結果もこれを支持している。種小名の"paradoxum(矛盾)"も、ハナヤスリタケと類似した子実体を持ちながら、セミの幼虫から発生することにちなむ。

2022/1/29,大阪府 ウスイロウメムラセミタケ。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)

ウスキサナギタケ・ハナサナギタケ Cordyceps tenuipes

2021/7/10,京都府

ウスキサナギタケ Teleomorph of Cordyceps tenuipes

 子実体は棍棒型、長さ15から50㎜、1から複数本、宿主から直生する。柄は太さ3から10㎜、色は淡黄色から黄白色。結実部は柄よりも薄色で、柄との境はやや明瞭。子嚢殻は半裸生型、孔口は突出し、濃黄色から黄橙色。しばしばアナモルフ(ハナサナギタケ)を伴う。
 土中または朽木中の鱗翅目の蛹から発生する。

 発生は夏季に多い。

 本種のアナモルフは下記のハナサナギタケである。ハナサナギタケは頻繁にみられる虫草であるが、本種はそれとは比較的にまれであるように思われる。また、かつてはこの二形態それぞれに別種として学名がついていたが、2017年にKeplerらによって Cordyceps tenuipes に統合された。

2021/7/10,京都府

ハナサナギタケ Anamorph of Cordyceps tenuipes

 子実体は樹枝状の分生子柄束からなり、大きさは宿主などによって大きく変化する。分生子柄束は淡黄色から黄橙色、枝分かれした先端に、粉状の白色の分生子を多量につける。
 様々な鱗翅目の蛹・幼虫から発生し、地生型、気生型、朽木生型のすべてで見られる。

夏季を中心として周年発生し、最も普通な虫草の一つである。

2022/8/22,茨城県 子嚢殻も分生子も作っている個体。

2021/7/11 ウスキサナギタケ。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5),(8),(11),(18)

オイラセクチキムシタケ Ophiocordyceps rubiginosiperitheciata

2021/6/20,京都府

オイラセクチキムシタケ Ophiocordyceps rubiginosiperitheciata

 子実体はハリタケ型もしくはフトハリ型、長さ15から40㎜、1から3本宿主の胸部や腹部から直生する。柄の太さは約1から2mm、色は白~淡褐色、基部に向かうに従って褐色が強くなる。子実体の中間部~上部に裸生の子嚢殻を密生させ、柄と結実部の境は不明瞭。子嚢殻は赤褐色から濃褐色、成熟するにつれて色が赤くなる。
 朽木中の甲虫の幼虫(コメツキムシの仲間が多い)から発生する。

 10月ごろから早い個体は白いハリ状の穂を出し、一部は12~1月に結実、一部は穂のまま冬越しし3月~6月に結実する。そのため、冬虫夏草の少ない冬季または早春に多く見られる。

 似た種にサヌキクチキムシタケ(仮称、分子系統位置は未定)があるが、本種が青森県から奄美大島まで広くみられるのに対し、現在のところサヌキクチキムシタケは香川県でしか見つかっていない。

2020/11/15,京都府 未熟個体。

2022/2/14,京都府


参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)

ミドリコケビョウタケ Mniaecia jungermanniae

2021/3/6,大阪府

ミドリコケビョウタケ Mniaecia jungermanniae

 子実体は無柄の皿形、直径0.2から1.0㎜。子実層は平滑、濃い青緑色。縁は全縁で、周縁部がわずかに厚くなることもある。外皮層も平滑で、子実層と同色。

 2月から4月にかけての春期に、小型の苔類の上、ないしはそのすぐ周辺の地表に発生する。経験的には比較的日当たりの良い場所で多いように感じる。苔類に寄生しているといわれ、宿主のコケの属には Calypogeia, Cephalozia, Cephaloziella, Diplophyllum,  Jungermannia, Lepidozia, Lophozia, Lophocolea, Nardia などが挙げられている。

 Mniaecia 属のほかの種も苔類に寄生することが知られているが、子実体が青緑色でないという点で本種とは区別できる。なお、参考文献では、子嚢胞子などの形態から二系統あることが示唆されており、今後はその検討もなされる可能性がある。

2022/2/6,大阪府

2021/3/6,大阪府


参考文献-(22),(23)

アヤカシクモタケ(仮) Hevansia sp.

2020/11/15,京都府

アヤカシクモタケ(仮) Hevansia sp.

 子実体は高さ1-4㎜、細い棍棒状で複数本束生し、白色から薄黄色。表面は白色から薄い桃色の分生子で覆われ、粉っぽい質感をもつ。菌糸は薄く宿主を覆う。

 小型のクモから発生し、空中湿度の高い沢沿いの葉裏などに着生する。管理人の観察地では晩秋から冬季と、冬虫夏草にしてはやや珍しい時期に発生する。

 2020年11月の発見当初、管理人のTsukuruはタイ王国にて記載された Hevansia koratensis だと判断した。しかし、宿主が異なる点、またフィアライドの形態が異なる点などから、H.koratensis とは別種だという判断になり、アヤカシクモタケ(仮称)が提唱された。なお、国内においては、Gibellula leiopus などの未熟個体に似ているため、見逃されてきた可能性がある。

2020/1/11,京都府

参考文献-(4)

ハスノミクモタケ Hevansia nelumboides

2020/10/18,京都府

ハスノミクモタケ Hevansia nelumboides

 子実体はハスノミ型、高さ4-8㎜、1から数本直生し、白色から黄白色。柄は白色の微毛に覆われる。子嚢殻は埋生するが孔口は突出し、黄色。菌糸は宿主を覆い、付着基質まで広がることもある。しばしば白色から薄い桃色の分生子柄束を伴う。
 未熟個体やアナモルフは、子実体の先端がハスノミ状にならず、棍棒型もしくはハリタケ型のような形状となり、その表面に分生子をつける。

 小型のクモから発生し、空中湿度の高い沢沿いの葉裏や、オーバーハングした崖の面などに着生する。筆者の観察地では8月ごろから発生を始めるが、成熟するのは晩秋から冬季と、冬虫夏草にしてはやや珍しい発生パターンを示す。

 かつては柄を有するため Cordyceps 属に入れられていたが、(18)の論文により、Akanthomyces に近縁な新属 Hevansia 属に分類されたという経緯を持つ。

2021/2/8,追培養下

2021/2/14,追培養下

2021/12/19,京都府 未熟個体。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(18)


フタイロスカシツブタケ Ophiocordyceps sp.

2020/9/6,京都府にて採取、2020/11/25撮影

フタイロスカシツブタケ Ophiocordyceps sp.

 子実体は柄を欠き、トルビエラ型。子座は黄白色で、子嚢殻は裸生し、褐色から黒褐色。未熟な子嚢殻は、類白色。

 シャクトリムシハリセンボンに重複寄生する。

 分子系統的な位置は未定だが、生態や形態などの点から、アリノミジンツブタケ(仮) Ophiocordyceps sp. と非常に近縁、もしくは同種だと思われる。アリノミジンツブタケは、ツブガタアリタケ Ophiocordyceps sessilis に近縁だと思われるため、本種もOphiocordyceps属の未記載種として扱った。
 また、ツブガタアリタケは、分子系統的な分析の結果、ツブノセミタケやクチキムシツブタケに近縁だとされており、(仮にツブガタアリタケと本種が近縁ならば)ツブガタアリタケや本種は、クチキムシツブタケなどと同じPerennicordyceps属におくのが適切かもしれない。

参考文献-(1),(20)

アリノミジンツブタケ(仮) Ophiocordyceps sp.

2020/6/27,京都府 タイワンアリタケに寄生。


アリノミジンツブタケ(仮) Ophiocordyceps sp.

 子実体は柄を欠き、トルビエラ型。子座は黄白色で、子嚢殻は裸生し、褐色から黒褐色。未熟な子嚢殻は、類白色。
 イトヒキミジンアリタケに重複寄生するとされるが、タイワンアリタケに重複寄生することもある。

 分子系統的な位置は未定だが、生態や形態などの点から、ツブガタアリタケ Ophiocordyceps sessilis に近縁だと思われるため、Ophiocordyceps属の未記載種として扱った。同様に、非常に近縁、もしくは同種だと思われる種に、フタイロスカシツブタケ Ophiocordyceps sp. がある。
 また、ツブガタアリタケは、分子系統的な分析の結果、ツブノセミタケやクチキムシツブタケに近縁だとされており、(仮にツブガタアリタケと本種が近縁ならば)ツブガタアリタケや本種は、クチキムシツブタケなどと同じPerennicordyceps属におくのが適切かもしれない。

参考文献-(1),(20)

ツブノセミタケ Perennicordyceps prolifica

2021/6/20,京都府

ツブノセミタケ Perennicordyceps prolifica

 子実体はツブタケ型、地上部の長さ10-30㎜、1から数本直生する。柄は樹枝状で表面には縦じわや凹凸を生じ、未熟時は灰白色、後に淡黄褐色から褐色になる。結実部は未熟時に白色、成熟時には黄褐色から褐色、または淡桃色など。子嚢殻は最初白色の菌糸をまとうが、後に裸生。地中部は強靭な繊維質で50-300㎜、しばしばそれ以上に長くなり、黄褐色から白色。

 多年生・越年生があり、周年見られるが、成熟するのは夏期であることが多い。各種林内地上に発生するが、経験上ヒノキ林で発生することが多い。

 清水図鑑には亜種としてヒメハダカセミタケが掲載されているが、本種の小型個体であると思われる。

2022/2/14,京都府

2020/8/12,京都府

2020/7/24,京都府

2020/7/24,京都府



参考文献-(1),(2),(3),(4),(5),(8)


シャクトリムシハリセンボン Ophiocordyceps sp.

2020/7/24,京都府

シャクトリムシハリセンボン Ophiocordyceps sp.

 子実体は短いハリタケ型、長さ5-7㎜、直径0.4-0.6㎜、淡褐色から淡灰褐色、宿主の体節から10数本直生する。子嚢殻は裸生で、飴色または淡茶褐色。
 シャクガの幼虫から発生する。

 成熟するのは7から8月の夏期だが、未熟な個体や古い個体は年中見られる。渓流沿いの常緑低木の枝上などで見られる。

 本種を井岡山虫草 Ophiocordyceps jinggangshanensis と同種だとする向き(日本産きのこ目録 など)もあるが、ここでは別の未記載種として扱った。また、2018年にタイから記載された Ophiocordyceps geometridicola にもよく似ている。原色冬虫夏草図鑑や冬虫夏草生体図鑑では二次胞子に分裂するとされているものの、現在確認されている多くの個体で二次胞子への分裂は見られない点なども含めて検討が必要であると思われる。

2020/10/27,乾燥標本。

参考文献-(1),(3),(4),(5),(19)

ホソエノコベニムシタケ Blackwellomyces cardinalis

2021/7/25,京都府

ホソエノコベニムシタケ  Blackwellomyces cardinalis

 子実体はタンポ型もしくは棍棒型、長さ5~15㎜、1から数本直生、または地中で分岐する。地上部は淡橙色から橙色、地中部は白色を呈することもある。結実部の肉の色は白橙色から白紅色、子嚢殻は橙色から紅色、半裸性。
 小形の鱗翅目の幼虫に発生する。

 6月から9月にかけての夏期に発生。

 本種の和名と学名には一時期混乱が見られ、ここで掲載した種をホソエノコベニムシタケ(財田型)としていたこともあったが、財田型をこの名前に当て、もともと記載されていた系統のものを保留種として整理された。
 また、2017年になってCordyceps属からBlackwellomyces属(新設)に移された。
 余談だが、「冬虫夏草ハンドブック」に掲載されている本種とされるものはウスアカシャクトリムシタケだと思われ、同じ個体の写真が「冬虫夏草生態図鑑」にはウスアカシャクトリムシタケとして掲載されている。

2020/7/24,京都府

2020/7/24,京都府

参考文献-(1),(5),(18)


クサナギヒメタンポタケ Yosiokobayasia kusanagiensis

2020/6/13,大阪府

クサナギヒメタンポタケ Yosiokobayasia kusanagiensis

 子実体は不安定なタンポ型、長さ10から45㎜、1から数本生じる。結実部は不規則な卵型、直径5から10㎜、はじめ白色、後に黄褐色。柄は直径2から5㎜、はじめ白色、後に黄褐色から茶褐色。子嚢殻ははじめ埋生から斜埋生、後に周辺の菌糸が消失し、裸生。

 地中のガの繭(冬虫夏草生態図鑑によれば、石川県産のものはナカトビフトメイガ)から発生する。沢や小川などに直接面した斜面・崖面で見つかることが多い。また、発生地によっては隔年発生することもあるという。

 和名・学名の由来となった山形県草薙温泉で1981年に発見され、近年では京都・大阪・奈良など、近畿圏での確認例が多い。やや稀。本種のみでYosiokobayasia属を構成する。属名は、本種を含め多くの種の冬虫夏草を記載したことで知られる、小林博士にちなむ。

2021/5/30,大阪府

2020/6/7,大阪府

2020/6/7,大阪府 繭の中の宿主。

参考文献-(1),(3),(4),(5),(21)

オリーブサラタケ Aleurina imaii

2019/12/21,京都府

オリーブサラタケ Aleurina imaii

 子実体は肉厚で浅い椀形、後に皿形、直径5から15㎜。子実層面は、若いときにはツヤがありオリーブ色(緑褐色)、後に黄褐色から褐色。縁部は内側に巻く。外面は粗面で子実層面とほぼ同色かやや黄味を帯び、細かなさび色から赤褐色のいぼ状の鱗片に覆われる。

 6月と12月を中心として、広葉樹林内地上に散生する。

参考文献-(17),(23)

モエレリエラ属不明種 Moelleriella sp.

2020/4/26,大阪府

モエレリエラ属不明種 Moelleriella sp.

 子実体(子座)は宿主を覆い、革質で、直径1から2.5㎜、黄橙色。表面には円周状に凹部(分生子を形成)があり、ところどころ濃色を示す。

 周年、山地の渓流沿いなどの樹(主にツバキ)の葉裏に寄生するツバキコナジラミの蛹から発生する。

 本種はアナモルフである。日本において、本種は長らくAschersonia goldianaだと言われてきたが、分生子の形状などからMoelleriella oxystomaのアナモルフに最も近いと思われたため、ここにはこの学名で掲載した。

参考文献-(16)

モエレリエラ リベラ Moelleriella libera

2019/5/4,京都府

モエレリエラ リベラ Moelleriella libera

 アナモルフは、子実体(子座)は宿主を覆い、革質で、直径1から3㎜、白黄色から黄橙色。表面には上面に凹部(分生子を形成)があり、橙色を示す。

 周年、山地の渓流沿いなどの樹(主にミカンやヒサカキ、アオキなど)の葉裏に寄生するミカンコナジラミ?の蛹から発生する。

 本種のアナモルフは、かつてアスケルソニア アレイロディス Aschersonia aleyrodisと呼ばれいた。完全型を見ることは稀である。


2019/6/2,大阪府

参考文献-(1),(4),(16)

ニクアツベニサラタケ Phillipsia domingensis

2019/10/26,奈良県

ニクアツベニサラタケ Phillipsia domingensis

  子実体は無柄か極端に短い柄を持ち、皿形から浅い椀形直径20から95㎜、厚さ5から12㎜。子実層面は暗赤色からえんじ色、成熟すると盛り上がり、しわを生じる。外面は汚白色から黄色、肉眼ではほぼ平滑だが微毛に覆われる。

 秋、フジをはじめとした広葉樹の落枝などに単生から群生

 同じような環境を好み、しばしば混生する近縁種に、ウスミベニサラタケ Phillipsia sp.が存在する。ウスミベニサラタケは子実層面に白色斑を生じ、外面も白色であることから、本種と区別できる。

参考文献-(11),(15),(23)

ウスミベニサラタケ Phillipsia sp.

2019/10/26,奈良県 左が本種、右はニクアツベニサラタケ。

ウスミベニサラタケ Phillipsia sp.

 子実体は無柄か短い柄を持ち、形、直径10から35㎜、厚さ5から7㎜。子実層面は桃色からえんじ色、斑上に脱色し、白色斑を生じる。外面は汚白色から白色。

 秋、フジをはじめとした広葉樹の落枝などに単生から群生

 同じような環境を好み、しばしば混生する近縁種に、ニクアツベニサラタケ Phillipsia domingensisが存在する。ニクアツベニサラタケは子実層面に白色斑を生じず、外面も汚白色から黄色であることから、本種と区別できる。また、ニクアツベニサラタケよりも本種は小型であることも多い。
 また、日本における本種については、2001年に新種記載されたウスミベニサラタケ Phillipsia subpurpureaだとされてきたが、子実層の白色斑の濃さや胞子の特徴が異なるため、別種だと思われる。特に、Phillipsia chinensisとして知られる種が本種と合致した特徴を持つため、そのものかごく近縁であると思われる。ただしここでは、本種の和名について「ウスミベニサラタケ」で浸透しているため、これを採用し、学名をPhillipsia sp.とした

参考文献-(15)

セミノハリセンボン Purpureocillium takamizusanense

2017/12/10,京都府

セミノハリセンボン Purpureocillium takamizusanense

 子実体は虫ピン状。先端に白色から薄紫色の分生子がつき、柄もほぼ同色。長さは2~3㎜、宿主の表面から多数発生する。
 主にセミの成虫(アブラゼミ、ニイニイゼミ、クマゼミからの発生を確認)から発生し、カメムシの成虫からも発生することがある。

 夏期に多く発生するが、それ以外の季節に発生が見られることもある。

 本種は不完全菌類であり、テレオモルフとしてはスズキセミタケが知られている。しかし、同じようにセミの成虫から発生するイリオモテクマゼミタケコニシセミタケにも本種に似たアナモルフが発生することが知られており、広義の「セミノハリセンボン」には複数系統が含まれている可能性が高い。
 また、一定条件のもとで追培養を行うとテレオモルフが発生する場合がある。

2019/8/25,大阪府 ツノカメムシ科?から発生。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)

ハナヤスリタケ Tolypocladium ophioglossoides

2020/3/1,大阪府

ハナヤスリタケ Tolypocladium ophioglossoides

 子実体は棍棒~円筒型、地上部の長さ20~50㎜、1から数本直生する。柄の太さは約4~10㎜、黒褐色~黒色。頭部(結実部)は径5~15㎜、黒褐色~黒色。ただし未熟時は、柄が黄色~薄褐色で結実部は褐色。子嚢殻は埋生。地下部は不規則に分岐した細根状、白黄色~黄色。地下部は非常に複雑かつ繊細なため、採集には細心の注意が必要である。
 地下生菌の一種であるアミメツチダンゴ(ワナグラツチダンゴ)に寄生し、それらと共生関係にあるシイやカシといった常緑広葉樹の近くで多く発生する。

 冬虫夏草にしては珍しく、2月ごろという早春から子実体が現れはじめ、5月ごろまで見られる。

 筆者は確認していないが秋にも発生するという。
 類似種にシロネハナヤスリタケタンポタケモドキエゾハナヤスリタケイシカリハナヤスリタケなどがあるが、地下部が黄色を呈するのは本種だけであることで見分けられる。

2020/2/11,大阪府 やや未熟な個体。

参考文献-(1),(2),(3),(5),(8),(11)

テンガイカブリタケ Verpa digitaliformis

2021/4/3,大阪府

テンガイカブリタケ Verpa digitaliformis


 子実体は有柄で帽状、長さ50から120㎜。頭部はつりがね形で柄とは離生し、直径12から25㎜。頭部表面は
栗褐色から黄褐色、わずかにしわを持ち、若いころは平滑、後にあばた状にくぼみができ、しばしば細かな網目状。裏面(内面)は柄と同色。柄は円筒形で、やや根元に向かって太くなり、表面は平滑か小鱗片を生じ、直径8から15㎜、クリーム色か淡肉色。特に根元付近には肉色から褐色の鱗片をつけることが多い。中は中空で、内面は綿毛状の白色菌糸に覆われる。

 
 春、攪乱された草地や林内地上にまばらに生える。比較的稀な種。

 テンガイカブリという和名で呼ばれることもある。また、近縁種でしばしば本種のシノニムとされるものにズキンカブリ Verpa conicaが存在する。一説には柄に横縞状の鱗片があるのが Verpa conica だともされている。ここで見られるものは、多少の差はあれ縞状の鱗片をもつので Verpa conica かもしれない。一方で、日本国内でテンガイカブリとされているものにも、外見的に複数タイプあるように思われ、この二種に関しては今後検討が必要だろう。


    また、多くの図鑑などでは、トップのような若い個体の写真がが掲載されていることが多いので、下のような成熟個体を見た際に混乱をきたさないよう注意が求められる。

2020/4/19,大阪府 成熟個体。

参考文献-(7),(8),(10),(11)

ウラスジチャワンタケ Helvella acetabulum

2020/4/5,大阪府

ウラスジチャワンタケ Helvella acetabulum

 子実体は有柄の深い椀形、直径20から60㎜、全体が横から潰された様に歪む物が多い。子実層面は灰褐色。縁は強く内側に巻き、しばしば鋸歯状となる。外面の縁付近は子実層面とほぼ同色で微粉状またはちりめん状、基部に向って淡色で平滑になり、柄の近くでは殆んど白色になる。柄は乳白色で縦に畝状の隆起がある。 隆起は子嚢盤の下面に伸びて脈状に分岐しながら子嚢盤の縁近くにまで達する。

 春から初夏、広葉樹林内の地上に散生から群生。都市部の公園などでも発生する。

参考文献-(8),(10),(23)

クモタケ Purpureocillium atypicolum

2021/6/20,京都府

クモタケ Purpureocillium atypicolum


 子実体は棍棒型、長さは2から5㎝、地中のキシノウエトタテグモから単生する。上部に薄紫色の分生子がつく。柄は白色から薄黄色。宿主は白色の菌糸で覆われる。


 梅雨時を中心として、夏期に発生。地中に巣穴を掘って暮らすキシノウエトタテグモというクモから発生し、崖や土手などの斜面、石垣の隙間などから発生することが多いが、倒木などから発生することもある。近畿地方・関東地方では普通で、発生地では群生することも多い。

 本種はアナモルフであり、テレオモルフはイリオモテクモタケである。
 また、近年になってトタテグモ類以外のクモにも発生することがあると分かった。この場合は気生型で、腹部などが白色の菌糸で覆われ、その上に直接薄紫色の分生子が形成される。


2020/6/23,京都府

2022/7/16,神奈川県

参考文献-(1),(2),(4)