2019/10/26,奈良県 左が本種、右はニクアツベニサラタケ。 |
ウスミベニサラタケ Phillipsia sp.
子実体は無柄か短い柄を持ち、皿形、直径10から35㎜、厚さ5から7㎜。子実層面は桃色からえんじ色、斑上に脱色し、白色斑を生じる。外面は汚白色から白色。
秋、フジをはじめとした広葉樹の落枝などに単生から群生。
同じような環境を好み、しばしば混生する近縁種に、ニクアツベニサラタケ Phillipsia domingensisが存在する。ニクアツベニサラタケは子実層面に白色斑を生じず、外面も汚白色から黄色であることから、本種と区別できる。また、ニクアツベニサラタケよりも本種は小型であることも多い。また、日本における本種については、2001年に新種記載されたウスミベニサラタケ Phillipsia subpurpureaだとされてきたが、子実層の白色斑の濃さや胞子の特徴が異なるため、別種だと思われる。特に、Phillipsia chinensisとして知られる種が本種と合致した特徴を持つため、そのものかごく近縁であると思われる。ただしここでは、本種の和名について「ウスミベニサラタケ」で浸透しているため、これを採用し、学名をPhillipsia sp.とした。
参考文献-(15)
初めてメールさせていただきます。
返信削除香川県の櫻庭と申します。
非常に興味深いご報告ばかりで、感動しております。
ご教示いただきたいことがあり、メールさせていただきました。
香川県でウスミベニサラタケと思われる個体が多数見つかりますが、ニクアツベニサラタケとの違いがよく分かりません。見た目がサラミ状か否かで判断してよいのか不明です。顕微鏡観察での違いは明確なのでしょうか。可能であれば、記されている文献15をお教えいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
香川県高松市 櫻庭春彦
閲覧&コメントいただきありがとうございます。ここを更新するのが久しぶりでお返事が遅れてしまいました。すみません。
削除さて、ご質問の件ですが、私はウスミベニサラタケとニクアツベニサラタケは肉眼的な特徴(すなわち、サラミ模様か否か)判断しています。
ですが、顕微鏡観察での違いもあるようで、Angelini, C. & Medardi, G.らの "Tropical fungi: twelve species of lignicolous Ascomycota from the Dominican Republic. "によると子嚢胞子の表面の条線の数が異なる(ウスミ~のほうが、ニクアツ~より子嚢胞子表面の条線の数が多い)ということのようです。ただし、表面の構造の違いのため普通の水封での検鏡では観察しづらいかもしれません。
なお、参考文献(15)は、ANUSHA H. EKANAYAKA, D. J. BHAT4, KEVIN D. HYDE, E.B. GARETH JONES& QI ZHAOらの、"The genus Phillipsia from China and Thailand"という2017年の論文です。先の"Tropical fungi: twelve species of lignicolous Ascomycota from the Dominican Republic."もこちらも、オープンアクセスです。