クロハナビラタケ Ionomidotis frondosa

2019/12/21,京都府

クロハナビラタケ Ionomidotis frondosa

 子実体は柔軟な革質で多くの裂片に分かれ花びら状ないし扇状、長さ3から25㎜。ただし幼菌は椀状になることもある。子実層面はしばしば放射状に細かな縦じわを生じ、新鮮なときにはややツヤのある黒色。
 薄い水酸化カリウム(KOH)水溶液中で赤紫色の色素を溶出するのが著しい特徴である。

 経験では12月ごろの冬季に発生し、子実体は周年見られる。日本固有種とされているが、異論もある。

 外見の似た種にキクラゲ類に属するクロハナビラニカワタケがある。クロハナビラニカワタケは、本種に比べやや透明感があり、赤みを帯びることや、またKOH中で色素を溶出しない点で見分けられる。
 また、近縁種にクロムラサキハナビラタケムツノクロハナビラタケが存在する。

2020/12/19,KOH水溶液との反応の様子。

参考文献-(8),(10),(11)


ヒメロクショウグサレキン Chlorociboria omnivirens

2020/10/5,大阪府

ヒメロクショウグサレキン Chlorociboria omnivirens

 子嚢盤は径2から4㎜、青緑色だが色あせたように白色を帯び、周縁部はやや厚くなり盛り上がる。外皮層も青緑色を呈する。柄は中心生。発生する材を青緑色(緑青色)に染める。

 類似種にロクショウグサレキンロクショウグサレキンモドキがある。両種ともに、本種が子嚢盤が色あせたように白色を帯びる点で見分けられる。

参考文献-(11)

シャグマアミガサタケ Gyromitra esculenta

2020/3/11,兵庫県

シャグマアミガサタケ Gyromitra esculenta

 子実体は高さ5から8㎝、あるいはそれ以上になる。頭部は類球形から爆炎のような不定形、脳状のしわを生じ、赤褐色。縁は内に巻き、ときに柄に接するが、癒着しない。柄は太短く、下方で太まり、淡黄土色から淡赤褐色。頭部・柄部ともに中は不規則な空洞状。


 春季、アカマツなどの針葉樹下に群生から単生。

 本種は極めて強い毒を持つが、フィンランドなど欧州の一部地域ではゆでこぼして食用としている。これが可能なのは本種の主な毒の成分であるギロミトリンが、煮沸することで加水分解しモノメチルヒドラジン(有毒)になり、水蒸気と共に揮発するからだという。
(参考→http://zazamushi.net/syagumaamigasatake/)
 とはいえ、調理中に蒸気を吸い込むことによる中毒事故や、モノメチルヒドラジンが持つ発がん性なども考慮すると、安易に食用にすることは絶対におすすめしない

 類似した近縁種に、トビイロノボリリュウタケ(ヒグマアミガサタケ)が存在するが、発生時期が本種と異なる点で見分けられる。

2020/3/11,兵庫県 幼菌。

参考文献-(8),(10)

トガリアミガサタケ Morchella conica

2022/3/13,大阪府

トガリアミガサタケ Morchella conica

 子実体は高さ8から15㎝、中が空洞になる。頭部は円錐形から卵状円錐形、褐色から黒褐色、柄に隔生する。肋脈は黒褐色、縦脈がよく発達し、横脈は発達がやや劣る。柄は円筒形、頭部よりやや細く、地表付近で太まり、象牙色から淡赤褐色。微粉が柄の表面に付着する。

 2月から5月にかけて春季に発生し、イチョウやサクラの樹下で多く見られるが、そういった樹が無い環境にもしばしば発生する。温帯に広く分布する。

 まとめてブラックモレルとも呼ばれるオオトガリアミガサタケアシボソアミガサタケなどの複数の類似種があるほか、広義の本種とされるものにも複数の系統があると考えられており、これから細分化・整理されると思われる。ここで掲載した中にも複数系統あるかもしれない。

2020/3/9,大阪府 ここまでは同じイチョウ樹下に発生するタイプ。

2021/4/3,大阪府 スギ林に発生するタイプ。


参考文献-(8),(10)

アミメツチダンゴ Elaphomyces muricatus

2020/3/7,大阪府 二つに割った状態。

アミメツチダンゴ Elaphomyces muricatus

 子実体は球形から類球形、直径30㎜以内。表面はピラミッド状のイボに覆われ、黄褐色から褐色、菌根や土が付着する。外皮には褐色の顆粒が存在し、断面は大理石模様を呈する。グレバははじめ白色、後に赤褐色になり、粉状の子嚢胞子が詰まっている。子嚢は早期に消え、成熟時には子嚢胞子だけとなる。

 夏から冬にコナラやシイ、アカマツなどの樹下に、地中に埋まっているか、わずかに地表に露出して発生する。しばしばタンポタケヌメリタンポタケ、ハナヤスリタケといった菌生虫草の宿主となる。

 別名をワナグラツチダンゴというが、ここでは特徴をよく表したこの和名で掲載した。また、本種には様々な異なる特徴をもつ系統が確認されており、今後細かく再分類される可能性がある。

2020/3/7,大阪府 タンポタケに寄生された本種。


参考文献-(9)

カキノミタケ Penicilliopsis clavariiformis

2020/10/25,奈良県 アナモルフ。カキの果実中から発生。

カキノミタケ Penicilliopsis clavariiformis

 アナモルフは鹿の角状の分生子柄束を多数生じ、長さ5から50㎜、直径2から3㎜。分生子柄束上は分生子柄から発生した黄色の分生子に覆われる。新鮮なときには鮮やかな黄色、古くなると緑褐色から褐色を帯びる。

2019/10/26,奈良県 テレオモルフ。

 テレオモルフは古くなった分生子柄束上に球形から亜球形の子嚢果を形成する。子嚢果は薄褐色から赤褐色または茶褐色、乾燥すると表面に亀甲状の細かなひび割れを生じ、径2から7㎜。内部は外皮とグレバに構造が分かれ、グレバに無数の子嚢を散在する。

 ヤマガキなどの種子から発生し、好マンナン菌として知られる。多くはカキの樹下に発生するが、タヌキのためふんからの発生例も知られている。また、亜熱帯性菌といわれ、日本では本州以南に分布する。

参考文献-(8)

セミタケ Ophiocordyceps sobolifera

2022/7/16,神奈川県

セミタケ Ophiocordyceps sobolifera

 子実体は棍棒型、長さ2から8㎝、直径は5から7㎜。結実部は淡褐色から淡橙褐色、柄部は淡橙褐色でだんだら模様があることが多い。また、しばしば根元にこぶ状のソボールが生じる。ソボールには厚膜胞子を生じる。子嚢殻は埋生で目立たない。
地中のニイニイゼミの幼虫から発生し、1個体から子実体は通常1本、2本以上発生する場合もある。

主に梅雨明けを中心として夏期に発生。人の手が入った庭園や寺社の裸地を好んで発生する。都市部でのニイニイゼミの減少を受けてか、近畿地方では近年とみに発生が減少しており、京都府では絶滅危惧種に指定されている。

 変種としてシロセミタケトサノセミタケが知られている。

2022/7/16,神奈川県

2022/7/16,神奈川県 子実体が2本に分岐した個体。

2019/7/14,京都府 ソボールに注目。

2022/7/17

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5),(7)

タイワンアリタケ Ophiocordyceps ootakii

2020/12/12,追培養下。

タイワンアリタケ Ophiocordyceps ootakii

 
子実体はクビオレ型、宿主の主に頸部から通常単性、まれに複数本発生、長さ5から15㎜。結実部は柄部の中程に1から5個つき、柄部ともに未熟な頃には紫から紫をおびた褐色、成熟すると黒色。子嚢殻は埋生、孔口が突出する。宿主は褐色の菌糸でうっすらと覆われる。
沢沿いの低木の葉裏(フユイチゴ、アオキなど)に着生したチクシトゲアリから発生。

未熟な個体は通年見られるが、夏期から秋季に成熟するといわれている。経験上あまり高い位置ではなく地表から近い、膝丈以下程度の高さの葉裏に着生していることが多い。

 類似種にクビオレアリタケイトヒキミジンアリタケがあるが、宿主と着生の仕方が異なる点で見分けられる。

 また、もともと本種はOphiocordyceps unilateralisという学名をあてられていたが、近年になって再調査された結果、日本のものは京都府産の標本をタイプ標本としてOphiocordyceps ootakiiへ変更された。ちなみに、本種の亜種とされていたクビオレアリタケは別種として新種記載された。

2021/12/19,京都府

2022/2/15,上の個体の追培養下。

2020/12/24,追培養下。

参考文献-(1),(3),(4),(6)

ヌメリタンポタケ Tolypocladium longisegmentum

2021/1/31,大阪府

ヌメリタンポタケ Tolypocladium longisegmentum

 子実体はタンポ型、長さ210㎝1から数本直生する。柄の太さは約0.40.8㎝、黄褐色~黒褐色、上部ほど色が濃くなることがあり、また宿主付近で濃い黄色を呈することが多い。頭部(結実部)は径0.61.5㎝、褐色~黒褐色、ヌメリ(光沢)を持つ。また、断面の肉の色は黄白色。子嚢殻は埋生、孔口はこぶ状に微突出する。
 地下生菌の一種であるアミメツチダンゴ(ワナグラツチダンゴ)に寄生する。

 冬虫夏草にしては珍しく、2月ごろという早春から子実体が現れはじめ、3月ごろまで見られる。他の菌生虫草に比べてやや発生時期が早い。
宿主と共生関係にある、コナラの近くで発生することが多い。

 また、外見が酷似している近縁種にタンポタケエゾタンポタケなどが存在する。タンポタケは本種に比べ子実体の色彩が淡く、子実体の断面が白色を呈することで見分けられる。エゾタンポタケは肉眼的には本種と見分けるのは困難で、顕微鏡で胞子を観察しなければ同定できない。

2022/3/21,京都府

2022/3/22

2020/3/14,大阪府 断面は黄白色。


2021/2/6,大阪府

参考文献-(1),(2),(3),(5)

シュイロクチキタンポタケ Cordyceps sp.

2021/9/5,大阪府

シュイロクチキタンポタケ Cordyceps sp.

 子実体は不安定なタンポ型、長さ5から13㎜1から3本宿主の背部から生じる。結実部は黄橙色から赤橙色、柄は黄色から黄橙色、微毛やささくれを生じる場合もある。朽木中の宿主を覆う菌糸は黄色から白色。子嚢殻は埋生するが突出し、孔口は周囲より濃色。

朽木中(特にアカマツに多い)の様々な甲虫類(ゴミムシダマシ科、コメツキムシ科など)の幼虫、まれに成虫から発生する。

Tsukuruの観察例では7月中ごろから未熟な個体が発生し、8月後半から9月前半にかけて成熟した個体が多くなる。また、京都府では7月と10月の2回発生し、10月に発生した個体はしばしば冬季まで姿をとどめるという。このように、通年発生が見られる地域もある。
 香川県から和歌山県など、西日本各地で確認されるが、全国的にはやや稀。

似た種に、アマミコベニタンポタケ Cordyceps sp. 、ケイトウクチキムシタケ(台灣蟲草Ophiocordyceps formosana 、Ophiocordyceps spicatus (和名なし) ある。
 また、本種は未記載種であり、まだ分子系統的位置は未定。現在仮置きされているCordyceps属(広義)への帰属には、胞子の特徴などから、異論がある。
 なお、Tsukuruの個人的な見解では、ケイトウクチキムシタケ Ophiocordyceps formosana や Ophiocordyceps spicatus (和名なし) と極めて近縁、もしくは同種だと思われる。

2021/9/5

2021/9/5

2019/7/20,大阪府 発生環境。

参考文献-(1),(3),(5),(23)




タンポタケ(春型) Tolypocladium aff. capitatum

2021/3/14,大阪府

タンポタケ(春型) Tolypocladium aff. capitatum

 
子実体はタンポ型、長さ20150㎜1から数本直生する。柄の太さは約410㎜、黄褐色~暗いオリーブ色、まれにささくれを生じ、上部ほど色が濃くなることが多い。頭部(結実部)は径620㎜、オリーブ色~黒褐色、または茶褐色。ただし大きさ・色彩ともに変異が大きい。また、断面の肉の色は白色。子嚢殻は埋生。
 地下生菌の一種であるアミメツチダンゴ(ワナグラツチダンゴ)に寄生する。

 冬虫夏草にしては珍しく、2月ごろという早春から子実体が現れはじめ、4月ごろまで見られる。宿主と共生関係にある、シイやコナラの近くで多く発生する。一か所に群生することが多く、過去には80本弱の大量発生を確認した。

 本種には春型と秋型が知られており、ここで紹介したのは春型の方である。秋型を狭義のタンポタケTolypocladium capitatumとし、春型を別種とする考えもあり、ここではそれに従った。なお、春型と秋型では胞子の縦横比が微妙に異なるという。

 また、外見が酷似している近縁種にヌメリタンポタケエゾタンポタケなどが存在する。ヌメリタンポタケは頭部に滑りがあり、また子実体の断面が黄白色を呈することで見分けられる。エゾタンポタケは肉眼的には本種と見分けるのは困難で、顕微鏡で胞子を観察しなければ同定できない。

2020/3/14,大阪府

2021/1/31,大阪府

2020/3/7,大阪府 断面は白色。

参考文献-(1),(2),(3),(5)

オオセミタケ Paraisaria heteropoda

2018/4/6,京都府

オオセミタケ Paraisaria heteropoda

 
子実体はタンポ型、結実部は濃褐色、柄部は黄褐色、浅い縦じわやささくれが生じる場合もある。地下部は赤褐色を帯び、細根状。子嚢殻は埋生。
地中のセミの幼虫(アブラゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシからの発生を確認)から発生する。地上部は長さは10から60㎜、柄の直径は5から10㎜。全長は60から150㎜
宿主1個体から子実体は1本、もしくは2本以上発生する。

冬虫夏草の中では珍しく、2から5月にかけての春季に発生。庭園など人の手の入った場所にも発生することが多いうえに、冬虫夏草としては比較的大型で数も多いため、発見しやすい。季節を選ぶが、近畿地方では最も普通な冬虫夏草の一つといえる。

変種としてツツナガオオセミタケウスイロオオセミタケがある。
ツツナガオオセミタケは頭部が通常よりも縦に長いのが特徴で、ウスイロオオセミタケは子実体の色が薄く、全体的に薄い黄褐色~褐色を帯びるのが特徴。

2021/4/3,大阪府

2020/3/11,兵庫県
2018/4/15,京都府 ウスイロオオセミタケ。

2021/4/3,大阪府


参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)