ウメムラセミタケ Tolypocladium paradoxum

2022/1/29,大阪府 ウスイロウメムラセミタケ。

ウメムラセミタケ Tolypocladium paradoxum

 子実体はハナヤスリ型、地上部の長さ20-60㎜、1から数本直生する。柄は円柱型でややもろい肉質、未熟時は灰白色、後にオリーブ色から黒緑色になる。結実部は柄と同色。子嚢殻は結実部の肉の色よりやや濃色で埋生、孔口は突出する。地中部は菌糸状・細根状、または直根状、白色。
 地中の各種セミの幼虫から発生し、宿主は白色の菌糸で覆われる。

 春と秋に発生するとされるが、近畿地方では晩冬から発生がみられる。各種林内地上に発生する。トップの写真の個体はタンポタケ(春型)に混生していた。

 色彩変異が多く、清水図鑑には通常よりも淡色のウスイロウメムラセミタケ、紫色をしたムラサキウメムラセミタケ、白色をしたシロウメムラセミタケ、樺色をしたカバイロウメムラセミタケが記載されている。
 近縁種にイネゴセミタケ Tolypocladium inegoensis があるが、イネゴセミタケは子嚢殻が半裸生型である点、柄と結実部の境界があいまいである点、長野以北の北日本でのみ確認されている点などからウメムラセミタケと区別できる。
 本種はセミ生の冬虫夏草であるが、タンポタケハナヤスリタケといった菌生冬虫夏草と同じTolypocladium属に属し、分子系統学的な解析結果もこれを支持している。種小名の"paradoxum(矛盾)"も、ハナヤスリタケと類似した子実体を持ちながら、セミの幼虫から発生することにちなむ。

2022/1/29,大阪府 ウスイロウメムラセミタケ。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)