セミノハリセンボン Purpureocillium takamizusanense

2017/12/10,京都府

セミノハリセンボン Purpureocillium takamizusanense

 子実体は虫ピン状。先端に白色から薄紫色の分生子がつき、柄もほぼ同色。長さは2~3㎜、宿主の表面から多数発生する。
 主にセミの成虫(アブラゼミ、ニイニイゼミ、クマゼミからの発生を確認)から発生し、カメムシの成虫からも発生することがある。

 夏期に多く発生するが、それ以外の季節に発生が見られることもある。

 本種は不完全菌類であり、テレオモルフとしてはスズキセミタケが知られている。しかし、同じようにセミの成虫から発生するイリオモテクマゼミタケコニシセミタケにも本種に似たアナモルフが発生することが知られており、広義の「セミノハリセンボン」には複数系統が含まれている可能性が高い。
 また、一定条件のもとで追培養を行うとテレオモルフが発生する場合がある。

2019/8/25,大阪府 ツノカメムシ科?から発生。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(5)

ハナヤスリタケ Tolypocladium ophioglossoides

2020/3/1,大阪府

ハナヤスリタケ Tolypocladium ophioglossoides

 子実体は棍棒~円筒型、地上部の長さ20~50㎜、1から数本直生する。柄の太さは約4~10㎜、黒褐色~黒色。頭部(結実部)は径5~15㎜、黒褐色~黒色。ただし未熟時は、柄が黄色~薄褐色で結実部は褐色。子嚢殻は埋生。地下部は不規則に分岐した細根状、白黄色~黄色。地下部は非常に複雑かつ繊細なため、採集には細心の注意が必要である。
 地下生菌の一種であるアミメツチダンゴ(ワナグラツチダンゴ)に寄生し、それらと共生関係にあるシイやカシといった常緑広葉樹の近くで多く発生する。

 冬虫夏草にしては珍しく、2月ごろという早春から子実体が現れはじめ、5月ごろまで見られる。

 筆者は確認していないが秋にも発生するという。
 類似種にシロネハナヤスリタケタンポタケモドキエゾハナヤスリタケイシカリハナヤスリタケなどがあるが、地下部が黄色を呈するのは本種だけであることで見分けられる。

2020/2/11,大阪府 やや未熟な個体。

参考文献-(1),(2),(3),(5),(8),(11)

テンガイカブリタケ Verpa digitaliformis

2021/4/3,大阪府

テンガイカブリタケ Verpa digitaliformis


 子実体は有柄で帽状、長さ50から120㎜。頭部はつりがね形で柄とは離生し、直径12から25㎜。頭部表面は
栗褐色から黄褐色、わずかにしわを持ち、若いころは平滑、後にあばた状にくぼみができ、しばしば細かな網目状。裏面(内面)は柄と同色。柄は円筒形で、やや根元に向かって太くなり、表面は平滑か小鱗片を生じ、直径8から15㎜、クリーム色か淡肉色。特に根元付近には肉色から褐色の鱗片をつけることが多い。中は中空で、内面は綿毛状の白色菌糸に覆われる。

 
 春、攪乱された草地や林内地上にまばらに生える。比較的稀な種。

 テンガイカブリという和名で呼ばれることもある。また、近縁種でしばしば本種のシノニムとされるものにズキンカブリ Verpa conicaが存在する。一説には柄に横縞状の鱗片があるのが Verpa conica だともされている。ここで見られるものは、多少の差はあれ縞状の鱗片をもつので Verpa conica かもしれない。一方で、日本国内でテンガイカブリとされているものにも、外見的に複数タイプあるように思われ、この二種に関しては今後検討が必要だろう。


    また、多くの図鑑などでは、トップのような若い個体の写真がが掲載されていることが多いので、下のような成熟個体を見た際に混乱をきたさないよう注意が求められる。

2020/4/19,大阪府 成熟個体。

参考文献-(7),(8),(10),(11)

ウラスジチャワンタケ Helvella acetabulum

2020/4/5,大阪府

ウラスジチャワンタケ Helvella acetabulum

 子実体は有柄の深い椀形、直径20から60㎜、全体が横から潰された様に歪む物が多い。子実層面は灰褐色。縁は強く内側に巻き、しばしば鋸歯状となる。外面の縁付近は子実層面とほぼ同色で微粉状またはちりめん状、基部に向って淡色で平滑になり、柄の近くでは殆んど白色になる。柄は乳白色で縦に畝状の隆起がある。 隆起は子嚢盤の下面に伸びて脈状に分岐しながら子嚢盤の縁近くにまで達する。

 春から初夏、広葉樹林内の地上に散生から群生。都市部の公園などでも発生する。

参考文献-(8),(10),(23)

クモタケ Purpureocillium atypicolum

2021/6/20,京都府

クモタケ Purpureocillium atypicolum


 子実体は棍棒型、長さは2から5㎝、地中のキシノウエトタテグモから単生する。上部に薄紫色の分生子がつく。柄は白色から薄黄色。宿主は白色の菌糸で覆われる。


 梅雨時を中心として、夏期に発生。地中に巣穴を掘って暮らすキシノウエトタテグモというクモから発生し、崖や土手などの斜面、石垣の隙間などから発生することが多いが、倒木などから発生することもある。近畿地方・関東地方では普通で、発生地では群生することも多い。

 本種はアナモルフであり、テレオモルフはイリオモテクモタケである。
 また、近年になってトタテグモ類以外のクモにも発生することがあると分かった。この場合は気生型で、腹部などが白色の菌糸で覆われ、その上に直接薄紫色の分生子が形成される。


2020/6/23,京都府

2022/7/16,神奈川県

参考文献-(1),(2),(4)


カメムシタケ Ophiocordyceps nutans

2019/7/15,奈良県

カメムシタケ Ophiocordyceps nutans

  子実体はミミカキ型、長さ35から100㎜、宿主から1から2本直生する。結実部は円筒形で長さ5から10㎜、径2㎜前後、未熟児には鮮紅色、後に赤橙色。柄は不規則にねじれた針金状で、黒色。子嚢殻は斜埋生。
 各種林内地上で、露出または軽く埋まっているカメムシの成虫から発生。宿主のカメムシはカメムシ科、ツノカメムシ科、ヘリカメムシ科などが多い。

 夏期を中心として5から10月にかけて見られる。しばしばクズやイタドリ群落下で群生することがある。

 別名をミミカキタケという。変種にシロガシラカメムシタケキイロカメムシタケがある。また、本種の結実部には、しばしばエダウチカメムシタケPolycephalomyces sp.が重複寄生する。


2019/7/15,奈良県
2019/7/15,奈良県 エダウチカメムシタケ。

参考文献-(1),(2),(3),(4),(8),(11)

カバイロサカズキタケ Helvella leucomelaena

2020/3/21,京都府

カバイロサカズキタケ Helvella leucomelaena

 子実体は有柄の深い椀形、直径10から40㎜。子実層面は平滑で、灰褐色から茶褐色。また周縁部はひび割れ、鋸歯状になる。外面はやや白っぽい粉状、上部は子実層面に比べ淡色。柄は短くて太く、しばしば縦のしわひだがある。基部付近は綿毛を生じ、乳白色。


 春、各種林内や庭園の地上に散生から群生。

2020/3/21,京都府 幼菌。


参考文献-(8),(11),(23)

コシカケノムシピン Phaeocalicium polyporaeum

2019/7/15,奈良県

コシカケノムシピン Phaeocalicium polyporaeum

 子実体は有柄でピンゴケ型、全体に黒色。頭部は子嚢を形成し、直径0.09〜0.16 ㎜。柄は長さ0.45から0.8 ㎜、太さ0.04から0.07 ㎜。

 周年、シハイタケ属の子実体上に群生する。経験上、基質のシハイタケ属は緑藻に覆われているような古い個体であることが多い。日本では奈良・長野、海外では北米、ヨーロッパロシア、シベリア、カフカス地方から見つかっており、世界的な凡布種である可能性もあり、日本にも広く分布していると思われる。

 外見の似た近縁種に、ノミピンゴケ P.compressulumニセノミピンゴケ P. fl abelliformeミツカベノミピンゴケ P. triseptatum が存在するが、これらと本種は、発生基質がシハイタケ属菌であるか否かで見分けられる。

参考文献-(13)

クロチャワンタケ Pseudoplectania nigrella

2020/4/26,大阪府

クロチャワンタケ Pseudoplectania nigrella

 子実体は無柄の浅い椀形、直径3から15㎜。子実層面はややツヤがあり、ほぼ黒褐色から黒色、また周縁部は鋸歯状に盛り上がる。外面は黒色、粗面で、微毛を生じる。

 早春から初夏にかけて竹林、針葉樹林で見られる。

 外見の似た種に、クロヒメチャワンタケニセクロチャワンタケがある。クロヒメチャワンタケは本種と外見が酷似している。ただし、クロヒメチャワンタケは発生期が初夏であるので、春季に発生するものはクロチャワンタケだと判別がつく。ただし発生時期が重なる初夏は、検鏡しなければ同定は難しい。
 ニセクロチャワンタケは、本種より大きい、しばしば有柄、外面の微毛が肉眼で確認しづらいなどの点から本種と識別できる。

参考文献-(8),(11),(23)

ジュシミゾグサレビョウキン Sarea resinae

2019/8/25,大阪府

ジュシミゾグサレビョウキン Sarea resinae

 子実体は若いうちは浅い椀形、後に開いて皿形、直径1から3㎜、橙色。子実層面はやや粗面で、周縁には盛り上がり、縁取りとなる。柄は無いかごく短い。ヒノキの古くなった樹脂上に散生から群生。

 ほぼ周年、ヒノキの樹脂上に見られる。

 同じような生態を持つ近縁種に Sarea difformis が存在するが、Sarea difformis は子実体が黒色である点で容易に見分けられる。

参考文献-(23)

ホオノキキンカクキン Ciborinia aff. gracilipes

2019/3/20,京都府

ホオノキキンカクキン Ciborinia aff. gracilipes

 子実体は菌核から発生し、有柄の椀型。子嚢盤はしばしば皿型まで開き、直径3から10 ㎜、透明感のある赤褐色、周縁に濃色の縁取りを持つ。また子嚢盤の外面はやや粗面から平滑。柄は土粒をまとい、赤褐色から濃褐色、菌核に近づくにつれて濃色を呈する。菌核は扁平な楕円形(小判型)、黒色。

 春、モクレンやコブシ樹下で見られる。都市部の公園や庭園でもしばしば発生する。

 海外で見られる C. gracilipes にごく近縁な別種もしくは同種として、C. aff. gracilipes として掲載した。もともとモクレンキンカクチャワンタケなどと呼ばれていたが、参考文献(23)において新称ホオノキキンカクキンが提唱された。

2021/3/7,大阪府

参考文献-(23)

アオズキンタケ Leotia chlorocephala

2019/12/21,京都府

アオズキンタケ Leotia chlorocephala

 子実体は頭巾形、軟らかいゼラチン質。 頭部は半球形、拳形などで子実層面は平滑、暗青緑色ないしウグイス色で粘性は無く、径5から12㎜。 柄は円柱形で長さ20から50㎜、直径3から5㎜、子実層面よりやや淡色で、表面は顆粒状。

 秋から初冬にかけて、広葉樹林内に散生する。しばしば地表のコケの色に紛れて発見するのが困難。

 形態がほぼ同じで色彩が異なるものに、ズキンタケアカエノズキンタケがある。

参考文献-(10),(11),(23)

ツバキキンカクチャワンタケ Ciborinia camelliae

2021/3/7,大阪府

ツバキキンカクチャワンタケ Ciborinia camelliae

 子実体は菌核から発生し、有柄の椀型、淡黄褐色からくすんだ褐色。子嚢盤はしばしば皿型まで開くが、中央はくぼみ、直径5から20㎜。また子嚢盤の外面はやや粉状で、白色を帯びるが、後に薄れる。柄は長く、地中の菌核につながる。菌核は不定形、かさぶた型や類球形、黒褐色から黒色。

 春、ツバキ樹下に広く見られる。環境はあまり選ばないようで、都市部の公園や庭園などにもしばしば発生する。なお、少数ながらサザンカ樹下で発生した例もある。

 ツバキの花を変色させて落とすので、園芸では病害菌として知られる。

2021/3/23,兵庫県

参考文献-(8),(10),(11),(23)

ニセキンカクキン属不明種 Ciborinia sp.

2020/3/11,兵庫県

ニセキンカクキン属不明種 Ciborinia sp.


 子実体は菌核から発生し、有柄の椀型、透明感のあるもろい肉質。子嚢盤は早くから開き、しばしば成熟すると皿状になる。子嚢盤の直径は1.5から3 ㎜、淡黄褐色から象牙色。柄は長く、地中の菌核につながる。柄は褐色で、表面に白色の微毛を生じる。菌核は俵型で、長さ2から3 ㎜、黒色。

 春、ヒサカキ樹下で普通に見られる。おそらく非常に小さいため見逃されており、本州に広く分布すると考えられる。


 本種は未記載種であるうえに文献が非常に少ない。



2020/3/11,兵庫県


参考文献-(なし)

セぺドニウム クリソスペルマム Sepedonium chrysospermum

2019/9/7,大阪府

セぺドニウム クリソスペルマム Sepedonium chrysospermum

 寄主上に菌糸を覆うように密生させ、黄色から鮮黄色。未熟時には菌糸は白色。菌糸上に黄色の厚膜胞子を多数形成する。

 主に夏期、様々な種のイグチ類上に広く見られる。


 本種はアワタケヤドリ Hypomyces chrysospermus のアナモルフである。テレオモルフのアワタケヤドリは寄主上に赤褐色の子嚢殻を形成するというが、アナモルフに比べ発生数が極端に少なく、Tsukuruは未だに見たことがない。


2020/9/8,京都府 未熟な個体。

参考文献-(14)

カワラタケキセイキン Hypomyces subiculosus

2019/7/21,大阪府

カワラタケキセイキン Hypomyces subiculosus

 寄主上に橙~深橙色のスービクル(子実体形成菌糸層,subiculum)をつくり、寄主の管口部またはカサの一部、しばしば寄主の発生基質をも覆う。このスービクル上に半ば埋没するように同色の子嚢殻を形成し、子嚢殻は楕円形から長楕円形。また、これらの組織は水酸化カリウムにより赤紫色に着色する。

 周年、カワラタケをはじめとする硬質菌類の子実体上に発生する。経験上、寄主となるカワラタケは黒く傷んだ古い個体であることが多い。また、寄主のカワラタケは様々な環境で見られるが、本種は比較的空中湿度の高い場所を好むような気がする。
 世界的な凡布種である。
 
 本種と外見の似た近縁種として、タコウキンヤドリタケ H. aurantius が存在する。肉眼的な特徴は本種と酷似しているが、簡易的には発生時期で見分けられ、 H. aurantiusは4月~5月または 10 月下旬に発生時期が限定しているが、本種は周年見受けられる。ただし両種の発生時期が重なるときには、顕微鏡で子嚢胞子や分生子を観察しなければ同定できない。
 また、本種とH. aurantiusについてはあてる和名に混乱が見られ、H. aurantiusをカワラタケキセイキンとしている文献もある。

2019/7/21,大阪府

参考文献-(12)